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2011年5月13日 (金)

1375 原発停止

H岡原発が停止され始めました。決定までに裏でどんな取引があったのかは想像するしかありませんが…。さて原発を、例えばボイラに喩えると、つまりは火を落とした訳です。ボイラは、内部の蒸気圧力に耐えるために、熱い鉄板の容器(ドラム)やチューブ(水冷壁)などから構成されています。圧力容器の内部では、水分子が熱せられて、激しく熱振動を行っています。ただし、原発の場合その圧力とは、蒸気圧に加えて、「高い放射能圧」の二つを同時に保持する必要が訳です。水の場合激しさの程度を「圧力」と呼びますが、核反応を水が蒸発しない温度、圧力まで下げれば、原子炉はただの核燃料貯蔵庫になる訳です。

高い圧力を保持するためには、どうしてもその高いエネルギー状態の物質を圧力容器内に閉じ込める必要があります。元技術屋の立場で考えるならば、どんな圧力容器も100%の信頼性で製造する事は出来ない相談だというしかありません。容器の製作には、その材料(例えば圧延された鉄板)、加工(例えば熱曲げ加工や溶接)、組立工程などがあり、そのすべてに設備と作業者が介在します。それぞれが、100%の信頼性を持っていなければ、結局はその掛け算である圧力容器の信頼性も100%にはなり得ないのです。例えば、完全無欠の技量を持った溶接作業者などは存在しないはずなのです。それを担保するのが「非破壊検査」ですが、所詮これも人間に対するレントゲン撮影や超音波診断と全く同じ内容の検査なのです。内部欠陥は、あくまで白黒写真を眺めながら、やはり完全無欠ではない検査員が良し悪しを判定するしかないからです。

また通常のボイラであれば、ボイラの圧力が異常に高まった時には、燃料である重油やガスを止めさえすれば、火は消えて圧力は自然に下がります。燃料遮断弁が動かない時には、燃料ポンプやガスの元弁を人力で止めれば事なきを得るでしょう。一方、原子力の本質は「抑制された核分裂」ですから、制御棒や水で中性子の運動を抑制する必要がある訳です。しかし、今回の事故で明らかになったように、制御棒だけでは核分裂の暴走を止める事が出来ない事が素人にも分かってしまいました。そうであるならば、どんな天変地異が起こっても反応容器の中は「絶対に水位低下を起こさない」システムにしない限り、原発の安全性は担保されないはずです。その意味で、防潮堤のかさ上げや、非常用発電機の移設などは、何らの本質的な安全対策にはなっていないと断定できます。とりあえずのH岡の停止は朗報ですが、「本質対策」が出来ない限り、再稼働は大きなリスクは残ったままになるでしょう。

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