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2011年9月 1日 (木)

1479 押し込み型生産

作られた需要を支えるのが押し込み型生産です。この生産形態の進展は、T社の生産性の向上の優れた仕掛けであるJIT生産の普及に負うところが大です。つまりは、ピンと張ったサプライチェーンを構築する事により、少なくともラインからは徹底的に無駄が省かれたからです。しかし、整然としたラインからは毎日まいにち一定量の製品が市場に押し込まれる事になります。このシステムは、確かに生産には無駄が無いのでしょうが、ライン在庫が極端に少なく、例えば災害時などの緊急事態には、底の浅さが露呈し、直ちにライン停止に追い込まれます。

これと対局をなすのが、注文生産でしょう。注文を受けてから、資材調達の情報が流れ、ラインの生産計画にそれが追加されます。材料の入庫により生産が始まり、製品の種類によって、例えば1週間或いは1か月で出荷される事になります。しかし、注文生産が機能するのは、この時代では大型の設備製作か、或いは職人が手作りする様な伝統工芸品やクラフト品に限られる事になってしまいました。考えてみると、伝統工芸品の工房には、実に多くの原材料のストックが見られるはずです。木工の世界でも、たぶん数年分のストックは普通ではないかと想像しています。何故なら、木材工芸では、木材を自然乾燥させ、木の狂い・反りを出しきってしまうためには、少なくとも数年間の季節変化を通過させなければならないからです。数年分のストックは、生産側に、原材料供給面で十分な安定性をもたらします。

押し込み型の生産においては、しかし残念ながら朝の生産開始に合わせて、原材料は前の晩に運び込まれますので、ラインストックは精々半日分かそれ以下になっている事でしょう。ラインを安定的に運用するために、しかし結局は部品メーカーに数日分か数週間分のストックを持たせ、製品倉庫や問屋にもやはり少なからぬ在庫を強要する事になります。つまり、押し込み型生産は、非常に硬直化したシステムだと言うしかありません。右肩上がりの時代は機能したこのシステムも、経済の縮小局面では、逆にリスクの大きさだけが目立ちます。それは、春先の震災後の状況を考えまでもなく、中越地震の比較的規模の小さな災害時でさえ、車産業には多大なインパクトが出たのは記憶に新しいところです。結局私たちは、今後の縮小均衡社会に最も適したJITに代わる生産システムを、改めて工夫し直さなければならない時期に至ったと考えています。

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