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2012年3月 2日 (金)

1651 準静的過程

学校で居眠りしながら習った言葉に「準静的過程」というものがありました。これは、例えば熱サイクルで最大効率を出すためには、可能な限りゆっくりと(殆ど静的に)プロセスを進行させる必要があると言うものです。一例として、2500rpmで回転している自動車のエンジンを、例えば10rpm程度にスローダウンする事が出来れば、熱効率は飛躍的に向上するはずだ、という話になります。実際、大型の舶用のディーゼルエンジンは100rpm程度で回転し、高い熱効率を実現していますが、残念な事に高速エンジンと同じ出力を出そうとする場合、低速エンジンは大きくなり過ぎ、とても車などに積んで走らせる訳にはいきません。

この準静的過程を自然現象に敷衍すると、自然への理解がグンと深まるような気がします。つまり、自然の生き物はお天道様から得るエネルギーと、水と、炭酸ガスを使って生きていますので、そのいただいたエネルギーを仇や疎かにしないために、プロセスを可能な限りゆっくりと進めている様に見えるのです。それは、植物の生長や細胞の増殖を眺めても、周りから入手できる物質やエネルギーの範囲内で、ゆっくりと変化しています。

一方、人間だけが地下資源や化石エネルギーや化石水を掘り出して、それを駆使しながらあらゆる活動を加速させている様なのです。60年ほどの人生の中でのつたない経験で得た結論は、「物事の加速には必ず犠牲が伴う」と言うものです。これは、殆ど法則と呼んでも良いかもしれません。エンジン出力が何百馬力もあるスポーツカーに乗れば、痛快な加速度が体験できるかも知れませんが、事故のリスクは極度に増し、燃料もガブガブと食ってしまう訳です。同様に、化学工場で合成反応を加速するために、危ない触媒や熱エネルギーや電力を多用すれば、各種の公害や、温暖化を加速する事になる筈です。つまりは、環境悪化を加速して元凶は、私たちの社会システムを必要以上に加速させている全ての(生産や物流や移動などの)活動だ、と言い換えても良いでしょう。

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