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2012年12月 3日 (月)

1916 ボルト使用の危うさ

S子トンネルの天井板の崩落事故のニュースを見て気になった点があります。それは、ボルト・ナットの使い方です。ボルト・ナットが破損する場合、最も可能性が高いのは、ボルトのネジ底から亀裂が入って破断するケースです。ネジ底は、一種の切欠き状態であり、応力が集中する場所であると同時に、ネジ部に水分が入る事により、腐食環境にも晒されるからです。しかし、残念なことに、この部分の点検は簡単ではありません。数少ない手段としては、ボルトの先か頭から超音波を使って非破壊検査をするか、抜き取って磁気検査を行う程度しか考えられないのです。

もう一つの危うさは、ボルトを差し込む方向です。ボルトはいくつかの部材を締めつける有効な手段ではありますが、ボルトを張力が掛かる方向で使うのは明らかに間違っています。何故なら上述の様に、ネジが切れた場合に、部材が完全に外れて、バラバラになって崩落するからです。橋であれば桁が落ち、トンネルであれば天井板が落下する訳です。

ではどう使うのが正しいかですが、ボルトは本来は「シュアピン」として使うべき部品なのです。つまりは「せん断力」で力を受けるのです。部材は、重ねて力を受ける方向と直角にボルトを通すと、それはシェアピンとして機能します。しかし、部材を天井から吊り下げる場合に、天井側にボルトを植えこみ、それに部材をぶら下げて荷重を持たせる構造の場合、ボルトにはテンション(張力)が掛かりっ放しになります。もし、ボルトが地下水などで腐食環境にある場合、さらに車の排気ガスに含まれる、硫黄酸化物や窒素酸化物がその水に溶け込む事により、条件は更に厳しくなります。

どうしても、ボルトをテンション用として使わなければならない場合、慎重な設計者であれば、必ずバックアップ手段を講ずるでしょう。例えば、鉄鋼の部材が落下しても、別のワイヤなどで完全な崩落を防ぐとか、あるいはバックアップ用の桁を追加するとかです。これを「フェイルセーフ構造」と呼びますが、墜落してはならない航空機は間違いなくその様に設計されています。この常識が、果たして土木屋さんの常識にもなっていたかどうかについては、事故調査委の報告を待つしかありません。

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