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2013年8月18日 (日)

2162 インフラ診断3

インフラの最も重要な材料であるコンクリートに関しては、単なる建設素材として見る訳にはいきません。それは、常に化学変化を続ける「生きた素材」でもあるからです。石灰岩を原材料にして、それを高い温度で焼いて生石灰を作り、粘度など他の材料と反応させていわゆるセメントを作るのですが、その段階で天然素材を使うため、見た目は一緒でも実はセメントは非常にバラつきの大きな材料でもある訳です。しかも、セメント製造のプロセスは、ある時期一大進歩を遂げ、旧来の「湿式」から大幅な省エネが達成可能な「乾式プロセス」へと変容を遂げたことは意外に知られていません。その初期段階で、乾式プロセスの欠点とも言える、高いアルカリ性のセメントが全国的に流通しました。

セメントは、施工後その内部がアルカリ性に保たれることによって、空気中の酸素や炭酸ガスによる酸化(セメントにとっては中性化)を避け、中の鉄筋も健全に保つ性質が発現する訳ですが、異常に高いアルカリ性は、骨材として混入されている砕石の主成分であるシリカ(珪酸)と反応してそれを溶かします。これが、コンクリートの骨材アルカリ反応(ASR)なのですが、この反応を更に加速するのが、骨材として一時盛んに使われた海砂の塩分であり、更に分散剤として混入されている塩化カルシウムなどに含まれる塩分である訳です。ASRはコンクリートのガンとも呼ばれ、悪化する一方であり強度が元に戻る事はあり得ないのです。

更に言えば、コンクリート打設に使われるコンプリートポンプ車において、作業性を良くするために過剰な水の添加が日常的に行われる結果、いわば最初から「スカスカのコンクリート」建造物が高度成長期以降、現在でも施工され続けている事には、私たちはもっと注意を払うべきでしょう。コンクリートの健全性は、打設後1か月後に同じ生コンを使って作られたテストピースによって検査される筈ですが、それが同じバッチのサンプルであるかどうかの「トレーサビリティ」は、全く確保されていないのが実情なのです。役所に提出されるのは、サンプルの試験結果の「書類」だけなので、いくらでも悪い事が出来る余地がある事になります。

増え続ける大気中のCO2濃度は、さらにコンクリート表面からの酸化(中性化)を加速させている筈です。緻密なコンクリートでは、中性化のスピードは限定的(年間数ミリ以下)ですが、出来の悪いスカスカのコンクリートでは、10年以内に鉄筋のある深さ(例えば30-40㎜)まで進行する事も珍しくはない様です。震災で大きく破壊されたインフラのかなりの部分は、実は以上に劣化が進んだコンクリートが引き起こした「人災」である可能性も高いのです。異常劣化が進んでいるコンクリート建造物の修復は不可能で、もはや作り直すしか手立てはないのです。これは高度成長期の負の遺産と呼ぶしかない悲劇なのです。

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