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2014年4月 6日 (日)

2354 経年劣化

全ての設備や機械装置やインフラ構造物などについて言える事ですが、通常の使用によっても、たとえ休止していてもそれらは年々劣化を続けます。それらの主要な構造材料である金属材料について言えば、腐食や水素脆性や応力腐食割れなどにより、製造初期の強度から徐々に、あるいは急激に低下してして行きます。金属の強度は、原子同士の「共有結合」によって高いレベルに保たれてはいますが、それは純粋な結晶内部の話であり、金属は一般には多数の結晶の集まりとなっており、結晶と結晶の間にはその境(粒界)が存在するため、金属の破壊は通常その粒界から始まるのです。原子炉など放射線に晒される場合は、腐食に加え放射線による劣化も懸念されるところです。

投稿者のも、鉄鋼の場合、製造後すぐにでも一定の腐食環境下で応力に晒されると、非常に微細ですが「初期キズ」が生ずる事を経験しました。それは、舶用のエンジンで、工場での出力試験のために冷却水として普通の水道水を使った時、1週間程度の短い期間でも、非常に微細な初期腐食が始まったのです。その初期キズが1-2年という比較的短い期間に、貫通キズに成長し、結果としては冷却水の漏れ事故を起こしたのでした。出力試験のためとはいえ、製造後最初に補給する冷却水の中にも、しっかりと防食剤(インヒビター)を入れておくべきだったのです。

さて、通常の火力発電所のボイラであれば、腐食が生じた場合蒸気漏れや水漏れを起こし、それに気が付いたオペレータがプラントを停止するでしょう。水や蒸気が作業員に直接掛からない限り、水も蒸気も人畜無害ですから何の問題も起こりません。しかし、原子炉は違います。水も蒸気も放射能を帯びていますから、原子炉の破裂を防ぐための圧力逃がし(ベント)作業だけでも相当量の放射能が放出されてしまうでしょう。だからこそ、その蒸気から放射性物質を除去するためのフィルターベントが必要になる訳です。しかし、初期トラブルでのベント作業とは異なり、プラントの構造劣化が原因の漏れ事故に対しては、そもそもフィルターベントなど何の役にも立ちません。原発の設計者やプラント製造者は、確かに建設初期の安全性は保証出来るでしょう。しかし、一度稼働してしまったプラントを、例えば水圧を掛けて漏れ試験を行う事は現実的には無理ですし、まして構造体から試験片を切り出して強度試験を行って、劣化の程度を調べる事などできない相談だと言えるでしょう。つまり、稼働後の安全性の保障は、多くのチェックポイントを調べ上げて、非破壊検査結果や漏れなどに問題が無かったと言う「消極的な保証」しか出来ないのです。

経年劣化は、道路や橋梁やトンネルなどでも大問題になっていますが、それに対する有効な対策は、ほぼ手つかずの状態だと言うしかありません。何らかの事故が起こって初めて、後追いの対策工事をする事になるのでしょう。もし起こっても、それらの事故が小さくて済み、かつてのアメリカの高速道のアーチ橋の様な大惨事に至らない事を願うばかりです。

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