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2014年4月19日 (土)

2362 転覆事故

ブログ再開です。出張中、お隣のK国で客船が転覆してしまったと言うニュースが大きく報じられ続けていました。若い頃造船業でメシを食ってきた身として、船があんなにも短時間で転覆し、沈んでしまうものか、とある種のショックを感じました。しかし、最近のフェリー兼客船の船型ではあり得べき現象かも知れないと思い直しました。船は、基本的には必ずどんなに傾いたとしても復元力を失わない様に設計されています。それを説明するキーワードは、重心、浮力中心、メタセンターです。ここでは詳しくは触れませんが、いずれにしてもその関係が、崩れない様に設計されている訳です。それが崩れるのは、例えば船体に亀裂が入るか、座礁などで穴が開いて大量に浸水区画が広がった場合だけなのです。しかし、「だけ」と書くのは、実は間違っている事が、これまでの何度かの事故で証明されても居たのです。

もう一つの船の転覆の原因とは、実は荷崩れなのです。デッキ上に大量に積まれた木材を積んだ運搬船、あるいはや漁獲物をデッキに積んだ漁船、あるいは今回の様に船の重心より上に積載された車両を積んだフェリーなどが、何らかの理由で荷崩れを起こして、荷が左右どちらかに偏ってしまった場合、いわゆる設計上のメタセンターが異常に動いて(正常な復元力を失って)急激に傾いてしまうのです。投稿者の頭の中では数年前、和歌山沖で転覆したフェリー「Aりあけ」事故につながります。あの事故は荒天による荷崩れ事故でしたが、この種の船は、船の高い位置に客室があるので、どちらかといえば「トップヘビー」の設計となってしまうのです。復元力を稼ぐために、船底に錘を入れてはいるのですが、それを余り重くすると客や貨物の積載量が減るので、必要な量をやや上回る程度に留めざるを得ないと想像しています。船型も、基本的には幅を狭くしてスピードも上げられる様にも設計しています。ありふれた、フェリー船に比べれば、復元力が元々弱い設計なのです。

今回の事故は、荒天ではなかった事、テレビで見る限り船艇に座礁傷が見られなかった事を考えれば、無理な操船(急激な舵切り)の遠心力によって、十分に固縛されてはいなかった車両が荷崩れを起こして生じた、完全な人為事故と見るしかないのでしょう。加えて、中古で購入後に施したとされる客室の増築が、転覆を起こした際に悪さをしていた事も間違いないでしょう。残念ながら。しかし、技術者として反省すべきは、荷崩れを起こしてもなお転覆しない船の設計を目指すべきである事もまた間違いないでしょう。

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