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2015年5月28日 (木)

2711 退歩

退歩とは、言わずもがなですが進歩の反意語です。進歩は、特に1920世紀を通じて、常にポジティブな言葉であり続け、科学・技術であれ、経済であれ、社会の仕組みであれ、常にそれまでより新しくなり、増加すべきものであり、更に複雑にする事が是であると言われ続けたのでした。むしろ、進歩しなければ、国や社会や国民が怠惰であり、質が劣化してしまうと言ういいた強迫観念にすら支配されていたと言っても良いでしょう。そのため、例えば経済面では、1990年代にバブルが崩壊し、経済が縮小・停滞した事を指して失われた20年などと、時代にもネガティブなレッテルを貼ろうとするのです。科学・技術でも同様です。今日の贅沢品を、明日の大量生産品にする努力が、コンピュータが極限まで軽く、薄くなり、子供たちまで携帯電話やスマホを持てるようになった訳です。各種の製品は、旧モデルより性能が高くなり、かつ値段が下がらない事には、進歩が無いとまで批判される始末です。

しかし、考えてみればその20年の間に、私たちは何もしなかった訳ではなく、むしろそれまで以上に努力して、デフレ下の不景気に対処してきたのでした。車をハイブリッド化して燃費を向上させ、宇宙に多額の税金を使って宇宙飛行士を送り続けたのでした。しかし一方では、21世紀に入って、この国もいよいよ人口減少局面に入ってきたのであり、持続可能な(経済)成長など、夢のまた夢だと言うしかないのです。

さて、退歩です。退歩とは後ずさりの事ですから、悪く言えば逃げの姿勢だと言えるでしょう。もちろん、負けて退散するのであればその通りですが、行き過ぎた状態を解消するために、計画的にかつ慎重に後戻りするのであれば、それは合理的退歩と呼んでも良さそうです。実は、この事はこのブログのごく最初の頃にも書いたような気がします。既に、8年ほど前になりますが、サラリーマンを完全に辞めたのも、自分の人生を少し後戻りして総括し、環境や社会システムに関しても色々考えを巡らせてみようと考えたからでした。サラリーマンを辞めてフリーランスになって、少し退歩すると、自由に使えるお金が減り、食べ物も少し質素にせざるを得なくなりました。しかし、その分考える時間がたっぷり出来たのでした。年に数回しか行けなかった山にも、行こうと思えば近くの山だったら毎週でも出かける事が出来ます。

同様の事が社会システムでも言える様に思うのです。少し使うお金を減らして、その分知恵と工夫とボランティアの汗でカバーし、お互いを思いやる事が出来る社会に変るなら、それは好ましい退歩と言えるでしょう。でも考えてみれば、高度成長期の途中までの時代を思い返せば、私たちはそんな「良い時代」を経験していながら、お金のためにそれれを打ち捨ててここまで突っ走ってしまったのかも知れません。立ち止まって、少し戻ってみましょう。

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