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2015年8月13日 (木)

2774 オーバーシュート

2773の続きです。原発の怖さは、核分裂の制御が「ブレーキ制御」だけになっている点にあります。一定量以上(臨界以上)の核物質を格納した炉の中では、放っておけばそれらは激しく核分裂を繰り返し、やがてはメルトダウンやメルトスルーという大事故を引き起こすでしょう。それを抑えるのが「制御棒」である訳です。制御棒には、燃料棒間に遮蔽物を出し入れする事により、核分裂を緩慢にする役割があります。

つまり、制御棒とは、車で言えば出過ぎたスピードを抑えるブレーキに相当するのですが、困るのは核分裂を抑えるには、時間的な遅れが出る事と、制御棒以外の制御方法が準備されていない点なのです。真夏の午後の電力ピークに合わせて、出力を上げた原発が、夕方の負荷低下に合わせて徐々に出力を絞るのは問題ありませんが、例えば突然の落雷による大規模停電が起こった場合、瞬間的に負荷を絞る芸当は原発には出来ないのです。その場合、当然の事ながら、システムはタービンの回転数を抑え込むために蒸気弁を絞るのですが、核分裂を抑え込むまでには時間が掛かるので、蒸気だまりの圧力は急激に上昇するでしょう。最悪の場合、圧力を逃がすため(蒸気は)ベントされる訳ですが、この際放射性物質も放出される事になります。

こんな非常事態を回避するためには、原発の出力を例えば60%程度で抑制的に運転し、負荷変動に対しては、主力調整がし易い火力発電所で対応する事が現実的でしょう。いずれにしても、原発でも通常火力発電所でも、システムとしてはそれなりの「オーバーシュート」の癖を、システム内に抱えている事は間違いないのです。私たちは、需要と供給の双方で、大きな負荷変動を生じさせない様な、ソフトウェア的な方法を考え出さなくてはならないでしょう。BEMSとかHEMSとかいう言葉が一人歩きを始めていますが、さらに言えば、個別の機器レベルでの負荷の自己調整機能と、地域社会全体としての調整機能の併せワザが求められています。具体的には、例えばモーターの発停の際の負荷衝撃を和らげる「回生システム」や、短時間の負荷変動を吸収できる、キャパシータタイプの蓄電システムなどが挙げられます。最大の問題は、誰がそのコストを負担するか、なのですが・・・。

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