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2016年5月18日 (水)

3013 技術だけでは・・・

3012と同様の事を別の角度から見てみます。製品を作る技術がいくら優れていても、やはり製品が売れない場合も多いという話です。ここでは、いわゆる旅客機と呼ばれる「製品」をマナ板に載せてみましょう。この国でもかつては、国の技術を結集してYS-11という「名機」を世に送り出しました。それが、ギリシャからオリンピックの聖火を空輸した事は、確かに当時はまだ敗戦後の経済回復途上にあった国民に勇気を与えた事でしょう。幸いなことに。当時は戦時中の兵器としての航空機の研究開発に関わった技術者が、現役で活躍していた時期でもあり、「技術」という点だけから見れば、当時の最先端の近いところに到達していたとも言えるでしょう。事実、YS-11は、STOL性能(短い滑走路で離着陸が可能である性能)、燃費、操縦性など、当時のレベルでも優れた面が多かったのです。

しかし残念な事には、この機体は僅か200機弱しか売れなかったのです。業界の常識では、500機以上売れないと、開発費用の「元が引けない」と言われていますので、ビジネスとしては大赤字だったでしょう。当時まだ「メイド・イン・ジャパン」というブランドが確立出来ていなかった事もその理由の一つかも知れません。いずれにしても、技術で勝って、ビジネスで負ける、というこの国の弱点を地で行った感が残るプロジェクトであった訳です。

ブランド力以外に、モノを売りさばく仕組みを考えていなかった事も大きな「敗因」でしょう。工区会社は、運航に入ると手持ちの航空機をメンテナンスする事が必須です。一定の時間毎に、エンジンの定期点検や整備、機体の点検、時間交換部品の入替えなどなどです。そのためには、客先の利便を考えた整備や部品センターなどの拠点づくりも欠かせないでしょう。しかし、YS-11は基本的には、海外には僅かしか売れなかったので、整備は国内に限定されて、ますます海外には売りにくいと言う「売れないジレンマ」に陥ったのでした。市場調査やユーザー視点が、全くと言って良い程欠如していた、この国のビジネスレベルの低さが敗因だったと言えるでしょう。その後の業界事情については、次稿に続きます。

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