« 3115 MA&M | トップページ | 3117 MA&Mその3 »

2016年9月12日 (月)

3116 MA&M2

設備や機械の適切な保守は、実は省エネルギーにもつながります。多くの設備や機械においては、その性能は経年に従って低下します。動くものであれば、エンジンや油圧装置など可動部のある者は、その部分の抵抗が増えて、エネルギー効率も低下するからです。また、ボイラや空調機や熱交換器など、エネルギーの授受を行う設備においては、汚れが蓄積するとやはり効率が低下するのです。

摩擦抵抗を減らすのは、「潤滑油」です。動く部分のある機械には、例外なく潤滑油が施されているのです。サラサラのタービン油を強制的にポンプで回すタイプ、機械が動く事によって潤滑油が滴下する様に仕組まれるタイプ、あるいはグリスの様に半固体の潤滑油を予め仕込んでおくタイプなど、単独であるいは部位によってそれらを組み合わせながら、潤滑が行われているのです。摩擦を低下させることを目的とした学問を、トライボロジィと呼びますが、残念ながらこの学問はそれほど重要視されていない様な気がするのです。技術屋のカンですが、もし世の中の全ての設備や機械を、トライボロジィの専門家が診断し、潤滑を最適化したと仮定すれば、この国で使っているエネルギーの10%ほどは間違いなく節約可能だと見ています。

潤滑を要する面は、互いに限りなく凸凹を無くさなければなりません。ボールベアリングであれば、内外のレース面やボールは、限りなく鏡面に近いものでなくてはなりません。寿命が近くなったベアリングでは、その面が荒れてきて、あるいはフレーキングが生じて、回転音に異常が生じます。かと言って、平面同士が擦れ合うスライド面においては、互いに完全な平滑面であることは逆に有害になります。この場合は、面と面の間に潤滑油を溜めておく「ポケット」が必要なのです。それは手で触っても感じるかどうかという非常に浅いものでありますが、不可欠な凸凹でもあるのです。その凸凹を機械加工だけで作るのは実は難しく、未だに「キサゲ作業」という職人技に頼るところが大なのです。更に続きます。

|

« 3115 MA&M | トップページ | 3117 MA&Mその3 »

コメント

 現在の機械構造材料の最大のネックは摺動面。
いくら機械的特性(材料強度・硬さ)が高くても、材料というものは摩擦に弱い。
そのため潤滑油が存在する。しかしながら、それでも弱いので
コーティングをする。
しかし、日立金属が開発した自己潤滑性特殊鋼SLD-MAGICは
コーティングレスで摩擦に強いことが特徴。そのメカニズムは
潤滑油と鉄鋼材料が相互作用を起こし、グラファイト層間化合物
という高性能な潤滑物質を作るためであることが、日立金属技報
2017で公表された。
 これにより機械設計は小型化され、摩擦損失と軽量化の同時
解決が見込まれ、自動車の燃費向上に大いに寄与することが期待
されている。

投稿: トライボシステム展望 | 2017年3月 5日 (日) 13時48分

 これって、高性能冷間ダイス鋼って言う名でハイテン金型の寿命向上に寄与する材料ですね。うちも使って3年になりますが、耐久性は抜群です。

投稿: 軸受部品業 | 2017年4月 6日 (木) 20時16分

さすが、日本力の鋼。

投稿: ツールロールパン | 2017年4月12日 (水) 18時04分

日立の社会イノベーション戦略が見えてきた。驚くのはハード面で
あり、ベアリング構造の産業インフラをナノ結晶へ置換し、摩擦損失を30%減らすというものだ。CCSCとかGICとかでてくるが詳くは、いかのURLの特殊鋼の論文を参照されたし。

http://www.hitachi-metals.co.jp/rad/pdf/2017/vol33_r03.pdf

投稿: 素形材屋 | 2017年4月19日 (水) 21時55分

 やはり最近の機械損傷の大半は境界潤滑下ですよね。

投稿: ダイヤモンドソリューション | 2017年4月20日 (木) 20時49分

そうですね。ベアリングメタルに使えそうなので、試してみます。

投稿: プロペラリング | 2017年4月21日 (金) 19時25分

日立金属が発表した炭素結晶の競合モデル(CCSCモデル)という境界潤滑理論は破壊的にイノベーションの一つと思われる。
 なぜなら、いままでボールベアリングを人類はせっせと作っていたが、それがナノ結晶レベルの自己組織化能力により、等価の機能を有するGIC(グラファイト層間化合物)結晶を生成させる特殊鋼からだ。
 これは明日の機械産業の在り方を変えてしまうかもしれない革命と思う。この理論、ダイヤモンド理論ともいうがそれ以上のものだと思う。

投稿: 経営工学ウォッチャー | 2017年5月 6日 (土) 23時39分

 わたしも水素脆化説よりはこちらのほうがエビデンスをしめしているので大いに期待されると思います。応援がすくないので広めています。
 「いい」「わるい」のメカニズムがグラファイトとダイヤモンドという真逆の物性を持った同素体でそのメカニズムが語られ、その判定もラマン分光で明瞭な判定ができるからです。

投稿: 某職員 | 2017年5月11日 (木) 18時26分

 やっぱり産業機械の国の競争優位性は境界潤滑をどう制御するかにかかっていて
ドイツ車のダウンサイジングの嵐も、結局ピストンピンにDLCだった。しかしこれは違う。潤滑システムを見直せと言っている。自分の担当の部品だけに固執して表面硬度
をガンガン上げて、相手材を破壊したり、循環システム全体にナノダイヤをまき散らすのは良くないといっているのだ。つまりドイツ方式の部分最適化ではなく全体でドイツを上回るエンジンを作れる展望を示しているのだと思う。

投稿: GIC結晶 | 2017年5月29日 (月) 02時16分

 機械工学の本質とはなにか?それは統合力であると思う。細かなことを知らなくても何がボトルネックかということを自覚し、時にはチャレンジすることだ。そのキモとなるパラメータの限界はおおむね材料の耐久性にあったりする。
 この材料は一つの大きな可能性を示している。機械をなぜ小さくできないのかという原理を明確化した。原因が分かればここに勢力を投入しさらなる高みを求められる。地球環境に対する真水の直球勝負がこれから始まる。

投稿: パラダイムシフト | 2017年7月19日 (水) 17時19分

 内閣府がSIPで革新的構造材料なんていっているけど、航空機より自動車のCO2排出量が圧倒的に大きいのになんでジェット機のイメージ像をのっけるのか分からないな。

投稿: 錦織 | 2017年8月 5日 (土) 18時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/185422/64192722

この記事へのトラックバック一覧です: 3116 MA&M2:

« 3115 MA&M | トップページ | 3117 MA&Mその3 »