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2016年9月26日 (月)

3130 安全率(SF)

元技術屋としては、時々「安全率(Safety Factor)」が気になる事があります。中でも、安全率が十分には取れない航空機は、長年その業界でサラリーを貰っていた身としては、特に気になる分野でもあります。今日も、何やら旅客機の片方のエンジンが停止して、片肺飛行で空港に引き返したとか。数日前には、米軍の戦闘機の墜落事故の報道もあり、やはり耳をそばだててしまいます。航空機の安全率が低いのは当然の事で、もし航空機のそれを陸上の機械並みに大きく取れば、きっと重過ぎて、乗客を殆ど乗せる事が出来ない旅客機や装備を殆ど積めない戦闘機や爆撃機になってしまうことでしょう。

そうならないためには、安全率は極限までそぎ落とす必要がある訳です。もちろん、そうするためには単なる机上の(今はコンピュータ上か)の計算だけでは不十分で、必ず実体での破壊試験や疲労試験が義務づけられてもいるのです。例えば、旅客機の翼に実際に荷重を掛けて、具体的には翼を吊り上げて「万歳状態」にして、翼の付け根がどのくらいの荷重で折れてしまうかを試験するのです。疲労強度も万回単位に上る旅客機の離着陸を想定し、実際に翼に上下の繰り返し荷重を掛けるのです。離陸時は上向きの揚力を受け、着陸後は翼はその中にたっぷり積み込まれている燃料の重さで下に垂れてしまうからです。そして実際に疲労破壊を起こすまで、繰り返し荷重を掛ける事になります。

しかし、決してそれで安心できる訳ではありません。実際の航空機の運航には、予期せぬ天候などによる突発事態も起こるからです。例えば、ウインドシェアやダウンバーストあるいは上空の乱気流による衝撃荷重、あるいは気象やパイロットミスによるハードランディングも頻繁に起こりうる衝撃荷重の例となります。当然の事ながら、その衝撃荷重は、強い慣性力で回転しているエンジンのタービンにも影響を与えずには居ないでしょう。例えば、軸受への衝撃荷重や、タービン翼への強い振動などが考えられます。その様な履歴を持った航空機が、何千機も日夜の区別なく世界中を飛び回っているのです。考えてみれば、怖い話ではあります。今程度の低い事故率で運行出来ているという状況は、実は奇跡的なのだと言うしかないでしょう。飛行機は、出来れば乗りたくない乗り物の一つです。

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