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2020年5月18日 (月)

3761  近自然学の立場2

紹介が後になってしまいましたが、「近自然学」とはスイス在住のY脇正俊が提唱した、人間社会と自然との関わり方を説明する概念を論ずるもので、具体的には自然と人間社会との境界、林地や草原や河原や里山などの人間の手が入った自然を近自然と定義しています。その中で、人間が用いて良い技術は、いわゆるローテクを基本に据えますので、当然の事ながら使える(使って良い)エネルギー源も規模の小さな再エネに限定されることになります。その意味では、大型の風力発電やメガソーラー発電などは否定されます。一方で、戸別の屋根ソーラー発電は問題無しとする立場です。
近自然学のもう一つの立場として、人間社会と自然を広く捉えて、問題の所在を考えるという点があります。つまり、洪水が発生するから堤防を高く、厚く補強するのがこれまでの人間社会中心の治水の考え方だとすれば、近自然学的な立場から見ると、洪水が起こるのは山の保水力が低いことが理由であり、針葉樹中心の林業ではなく、広葉樹や針葉樹と広葉樹のとの混交林とすることによって、林床の保水力を高めることができ、合わせて根を深く張る広葉樹によって、広い面積の倒木を防止できると考えるのです。
人間社会だけからの視点では、自然は制御しがたく、それと付き合うのは面倒だと考えがちになりますが、一方で我々のご先祖様たちは人力だけを使って、しかし気が遠くなるくらいの長い年月を費やして、山に木を植え、棚田を起こし、防風林や防砂林を増やし続けて来た筈なのです。それは決して人間と自然との戦いなどではなく、自然に寄り添い自然と共生するための「近自然の整備」に他ならない行動だと言えるでしょう。結局、近自然学のエッセンスとは、自然を良く知り、人間社会と自然との距離を近く保ちながら、しかし自然に与える負荷は最小限に抑え込むという「持続可能な共生関係」を重視するという立場に立つ学問だと言えそうです。

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