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2021年4月16日 (金)

3932 トランプエレメント

トランプエレメントとは、冶金学などで言うところの、目的金属からどうしても除去できない(出来にくい)不純物を指す言葉です。例えば、最も多く使われている鉄鋼材料に関して言えば、リサイクルの過程で混入する、銅や錫や鉛などは、鋼の表面に集まって割れの原因になりますから、非常に有害です。亜鉛なども同様ですが、これは高温の溶解時に気化して飛んでしまいますので、亜鉛引き鋼板などのリサイクルには問題は無さそうです。
逆に、リサイクルされるアルミ材料においては、鉄分の混入が大敵になります。アルミが作る不働態膜の形成を阻害して錆の原因を作るからです。勿論、銅や亜鉛もアルミの腐食を助長しますが、これらの合金元素は、強度の高いジュラルミンでは積極的に加えられる元素でもあり、別途耐食性を上げる処理により腐食を防止する方法が取られます。
さてトランプエレメントですが、勿論新たに精錬された鉄鋼やアルミやその他の金属では問題になる事はないのですが、リサイクル材では事情が異なります。というのも、リサイクル材として持ち込まれる材料(スクラップ)の中には、種々の不純物やごみが混入している事が、溶解材の純度を低下させるからです。例えば、一緒に使われていた異種金属の破片や、耐食性を上げる目的で施されていたメッキや鉄鋼材へのステンレス材の混入などによって溶解材の純度が低下してしまうのです。これを補正するためには、例えば新規精錬材を一定量加えて、不純物の割合を基準以下に抑え込む方法が取られますが、不純物を物理・化学的或いは冶金学的に取り除くのは、通常はコスト的には見合わないのです。
根本的な対策は、リサイクル材は可能な限り、素性の知れたスクラップを、他の原料と混ぜずに純度を保つという受け身の対応しか無さそうなのです。多くの金属では、一度合金をしてしまうと、金属間化合物を形成してしまい、再度分離するには電気分解などで莫大なエネルギーを投入しない事には分離は出来ないのです。
ここでは、主に金属のトランプエレメントについて述べましたが、事情はPETなどのプラスチックや紙のリサイクルにおいても全く同様で、機能を高めるために数えきれない程の種類のプラスチック材が開発され、あるいは機能性の紙が開発された結果、リサイクルするたびにそれらの原材料は劣化をし続けるという負のサイクルに陥ってしまう訳です。コウゾやミツマタなどの繊維だけで作られ、他の人工材料(≒トランプエレメント)を加えないで漉かれる和紙がリサイクルの優等生と呼ばれる所以です。

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